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工学院大学附属中学校・高等学校<公式ブログ>

高2GP2020 タイ 校内プロジェクト報告

高校2年Global ProjectはSDGsの17のカテゴリーの中で、生徒一人一人がどの分野に興味を持ち、そのGlobal Goalsを自分に引き寄せ、実際にActionを起こしていく、もしくは将来かかわっていきたいかということが根底のテーマにあります。

 今年度のGlobal Projectタイでは、SDGsのカテゴリーでも、カテゴリー3「医療と福祉」カテゴリー5「ジェンダー」という2つのGlobal Goalsと「タイ」という国をかけあわせてGlobal Goalsを考えていく試みをしてきました。

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 しかしながら、このコロナ禍ではタイに行くことは難しく、本校のなかで「タイ」とOnlineでつながりながら、また対面で日本国内における「医療と福祉」「ジェンダー」の問題を12月13日、14日の2日間で共有してきました。

 13日午前は、SHARE(NGO国際保健協力市民の会)、HAATAS(NPO HIV/AIDS Action Team at SHARE)にご来校いただき、SDGsのテーマである”No one will be left behind”「誰も置き去りにはしない」という言葉について、また「置き去りにされているのは誰か?」という問題提起を受けました。これを読まれている方々にとって「置き去りにされているのは誰か?」と聴かれたら、どのような人々をイメージしますか?

 次に「感染するとは何か?」を体感するワークショップ、また「HIV/AIDS」をテーマに正しい知識の有無により、行動も変わってしまうこと、また正しい知識の有無以前に、日常生活をするなかで勝手に持ってしまうイメージを例として「HIV/AIDS」「LGBT」についてポストイットで出していきました。この当初持っていた一人一人のイメージや感情がこの2日間のなかでどのように変容していくかがこのタイプロジェクトの重要なところです。

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 昼食はタイ料理を味わいました。辛い!と言いながらも美味しくしっかりと食べて午後のプログラムです。

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 午後はReBit(NPO)より3名のLGBTの方にご来校いただき、ライフヒストリーをストレートに語っていただき、トークセッションでは、具体的なケースについてどうだったか?今または将来はどう考えているか?例えばカミングアウトは?周りの理解は?つらかった時は?パートナーは?将来のビジョンは?という内容についても個別具体的に語っていただきました。ここでは詳細は省かせていただきますが、何かしらの生きづらさを抱えながら、口頭では明るく大丈夫とおっしゃっていながらも、前向きに自分のアイデンティティの模索をしながら生きていこうとする姿を目の当たりにしたのではないかと思います。私からも本日の最後に次のことを伝えて初日を終わりとしました。

「ちがい」とは何か?「普通」とは何か?ということを再度問題提起しました。自分の中にあるちょっとした数学が苦手とか自分の中にあるちょっとしたマイノリティの部分を重ね合わせて欲しい。自分を脇に置いておいて、「HIV/AIDS」「感染者」「LGBT」とレッテルを貼り、一方的な立場で人の違いばかり見るのではなく、自分の中に違いを見つけ、それを他者にも重ね合わせてその人を理解することが、先ほどの問題提起に対する他人事ではない他者に寄り添う資格がある回答を出すきっかけとなる。自分を理解することが他者を理解することにつながるはず。

 2日目は、OnlineでHSF(NGO Health and Share Foundation タイ東北部NGO 保健医療分野のエキスパート)とつながり、タイのHIV/AIDS感染者の方、LGBTの方と交流をもつ機会をいただきました。昨日と同じようにライフヒストリーをうかがい、そのなかではHIV/AIDSのため周囲からの視線による子育ての大変さ(しかし子育て自体は一般的)、気苦労の多さ、またまさに男性優位のジェンダーの構図も垣間見えてきました。またLGBTについては比較的に寛容と見受けられる(この勝手なイメージが良くない)タイの社会でも存在する見えない社会的圧力、同性結婚に対する制度的な不備、マジョリティ/マイノリティという構図が存在することも見えてきました。

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またHSFのスタッフのご厚意で、工学院の生徒からの質問にどんどん答えていただける機会もつくっていただき、生徒たちは、ポストイットに自分が聴いてみたいことをどんどんと書いて質問をしていきました。トイレはどちらに入るの?パートナー、子どもはどうするの?パートナーの好きなところは?(同性婚をされているカップルもいらしたので)などなど多数です。この工学院の生徒の質問力は予定していたポストイットが不足するほどで素晴らしかったです。

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 最後には、事前に持っていた私たちのイメージとこの2日間を通して変わっていった私たちのイメージが明らかに変容していったことがわかります。

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 この2日間を通して、世界には生きづらさを抱えながらも、日々自分らしく前向きに生きていこうとする姿が十分に伝わったのではないかと思います。それはこの2日間の後にとったアンケートからもうかがえます。この2日間が終わった後に、タイのリーダーたちがプロジェクトを本校と一緒に企画したスタッフの方に、「今回参加してタイで実際に会ってさらにお話を聴いてみたかったです」というお話もありました。

 最後に私たちは社会のなかで生きています。私たちの在り方は社会の在り方です。アメリカでは”It Gets Better Project”という運動があったのはご存じでしょうか?10代のゲイの子どもたちが相次いでいじめによって自殺して亡くなってしまうという出来事がありました。当然反発する成人のゲイの人々がメッセージをyou tubeにアップロードしました。若いゲイの人々に向け”It Gets Better”「(今はつらいかもしれないけれど)きっと社会は良くなるから(頑張っていこう)」ということです。これは運動にまで発展し、レディ・ガガなどの有名人のみならず、一般市民にまで広まり、you tubeに応援メッセージ、社会の在り方を問うメッセージがアップロードされています。また当時の大統領のバラクオバマも動画でメッセージをアップロードしています。これは一つの例ですが、この2日間を体験、経験した生徒たちなら将来もしこのようなことが(起こっては欲しくはないですが)起こったとしても、何かアクションを起こす素地はできているのではないかと思います。

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 どのプロジェクトも「工学院 思考コードC3」を目指していますが、私たちのプロジェクトにおけるC3、何よりの貢献は「多様性への表層的ではない深い理解」です。これがあるからこそ、これからの未来でも「普通」「ちがい」「多様性」とは何か?を考えそして上辺だけではない行動できる人となるはずです。今後に期待しています。

最後にこの2日間タイプロジェクトにかかわってくれた方々に感謝御礼申し上げます。ありがとうございました。