中学3年生の「グローバルスタディ」では、社会課題を自分ごととして考え、他者の視点から解決策を構想する力を育む実践授業として、今回は富士通株式会社の皆様とオンラインでつながり、「SDGsxデザイン思考xテクノロジー/デザイン思考で考える富士通SDGsプログラム」のワークショップに参加しました。
授業では、生徒たちは以下の3つのグループ(会場)に分かれ、それぞれ以下の異なる社会課題をテーマに取り組みました。
・”スーパーの店長”がお客様に喜ばれ、愛される店づくり(サービス・小売)
・”駅員”があらゆる乗客が安心して利用できるようにするには(共生・情報)
・”交通が不便なまちに住む人”が行きたい場所に移動するには(まち・交通)
事前に立てた「問い」をもとに、班ごとにアイデアを出し合い、オンラインで富士通のファシリテーターと意見を交わしながら、課題解決に向けた提案を練り上げていきます。


■「交通の不便な地域の移動手段」について考察、発表されたアイデア(抜粋)
A班: 「バスタクシー」
バスの安価さと、タクシーの柔軟さ・快適さを兼ね備えた乗り合い型交通サービス。距離制の定額料金で高齢者や子どもも安心して利用できる設計。
B班: 「AI自動運転バス」
市民イベントを通じて実証走行を重ね、安全性と認知度を高めながら、地方交通の担い手として定着させていく構想。将来的には他のAIサービス展開への応用も視野に。
C班: 「地域交通を支える4つのアイデア」
デマンド交通、コミュニティバス、シェアサイクル、送迎ボランティアを組み合わせ、住民が協力しあって支える地域モデルを提案。
D班: 「高齢者向け運転代行サービス」
高齢者の孤独と移動手段不足を同時に解消。ドライバーとの会話や景色を楽しむ体験を通じて、安心と交流のある移動を実現。
どの班も、ただ技術を導入するだけでなく、「その人にとっての快適さ」や「安心できる体験」といった観点を重視していた点が印象的でした。


■通信の壁もまた、リアルな学びに
当日は授業前のどの会場でもZoomの接続は生徒が行っていました。
開始時に通信状態が不安定になった会場があり、十分に時間が取れずやむを得ず発表を断念したケースが発生しました。生徒の一人からは「僕たちが考えたアイデアを伝えられなくて残念でした」と悔しさをにじませる声も聞かれました。
しかし、そうした状況もまた“実社会とつながる”リアルな経験です。
限られた条件のなかで「どうすれば伝わるか」「どう工夫すれば共有できるか」を考える機会となり、生徒たちの学びはむしろ深まっていたように感じます。


■生徒の感想
発表後、生徒の一人からはこんな感想が寄せられました。
「ICTやAIが“便利”なだけでなく、誰かの暮らしを本当に良くするために使われていると知りました。これからも、そういう技術がたくさん生まれるといいなと思いました。」
■講師からのメッセージ
最後に、富士通の講師からは「アイデアのすばらしさに感動した」「AIを使ってプレゼンを準備していた班もあり驚いた」といった講評がありました。そして何より、「AIの提案を鵜呑みにせず、自分の頭で考え続ける姿勢が大切」「共感から始まる解決こそが、誰ひとり取り残さない社会につながる」というメッセージが、生徒たちの心に深く残ったようです。


今回の授業で生徒たちが体験した「デザイン思考」は、正解のない問いに向き合いながら、ユーザーや社会の視点に立って課題を捉え、対話や試行錯誤を通じてアイデアを形にしていく考え方です。
生徒たちは「〇〇だったらいいな」という想いを出発点に、身近な社会課題を自分ごととして考え、柔軟な発想でユニークな解決策を導き出していきました。
多様な立場の人に思いを巡らせながら答えのない問いに挑むこのプロセスは、未来を生きるうえで欠かせない力を育む機会となりました。
富士通株式会社の皆さまのご協力により、生徒たちは新しい発想と出会う時間を持つことができました。心より感謝申し上げます。(広報室)