工学院大学と附属高校の「高大連携授業」プロジェクト、第1回目が、情報Ⅱの授業時間で実施されました。これまでvol.1・vol.2では、先生方の打ち合わせや大学生との企画会議など“舞台裏”を紹介してきましたが、今回はいよいよ授業本編。情報Ⅱの教室が、特別な高大連携の学びの場となる一日です。

この授業で登壇したのは、工学院大学情報学部の4年生3名。いずれも附属高校の卒業生で、現在はそれぞれ異なる分野で学び、就職や大学院進学を目前に控えています。さらに、工学院大学 情報学部(DX実践ラボ)の田中久弥教授、本校情報科主任の新海先生も立ち会い、大学と高校がひとつの教室でつながる時間が始まりました。
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情報デザイン学科4年 青木 悠花 さん(DX推進支援企業に就職予定)
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情報科学科4年 田中 颯 さん(大学院に進学予定)
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情報通信工学科4年 丸藤 幹斗 さん(情報通信・組込系IT企業に就職予定)
「情報Ⅱでやっていることは、大学3年生レベルも」——青木さん
トップバッターは、情報デザイン学科4年の青木さん。
「情報を学ぶ必要性」というテーマで、自身の受験の迷いや、情報学部での学び、そして就職活動までを、高校時代のエピソードとともに語りました。
青木さんが紹介した「情報デザイン」という分野は、人とコンピュータの調和を目指す学問です。スマートフォンの持ちやすさ、アプリの見やすさ、キーボードの角度やWebサイトの配色まで、人が“使いやすい”と感じる仕組みを心理学や人間工学、プログラミング、統計などの知識で設計していきます。
青木さんは、情報Ⅱの授業内容を知ったときに驚いたといいます。高校の授業で扱うJavaScriptの基礎やアプリケーション作成、判別分析やクラスタリングといった分析方法は、大学で学ぶ「コンテンツ設計」や「知識情報」と同じ分野にあたる分野に位置づけられる内容だったからです。「高校生のうちから、大学3年で学ぶ内容を先取りしている」と実感したと語りました。
現在、青木さんは「歩行動作と感情表現」に関する研究を行いながら、IT業界への就職準備を進めています。人の動きから感情を推定するという研究で、プログラミングやデータ分析の知識を応用しています。「情報を学んでいると、IT企業だけでなく、どの業界でも“話が分かる人”として見てもらえる」と、情報の学びの汎用性と強みを強調しました。
「情報を学ぶことは、未来を創ること」——田中さん

続いて登壇したのは、情報科学科4年の田中さん。
中学入学から大学院修了まで、12年間を工学院で過ごすことになる“フルコース”の先輩です。
田中さんが紹介したのは、データサイエンスとAIの世界。手書き数字を認識させる実験(MNIST)を例に、AIが正確に判別する仕組みと、時に人間が見ても不思議に感じる誤りの例を紹介しながら、AIの奥深さを語りました。
さらに、自身の研究テーマである「CT画像を用いた肺塞栓症の早期発見モデル」にも触れました。造影剤を使ったCT画像と使わないCT画像を組み合わせて学習させ、将来的には造影なしでも異常を検出できるようにするという、医療応用を視野に入れた内容です。
また、生成AIの話題にも触れ、「仕組みを知ったうえで使うか、何も知らずに使うかで大きな差が出る」と話しました。情報Ⅰ・Ⅱで学ぶプログラミングやデータ分析は、まさに“仕組みを理解する側に立つための学び”だと語ります。
「情報を学ぶことは未来を創ること。情報の力であなたの未来をデザインしよう。」
そんな田中さんの一言に、教室が静かに引き込まれていくようでした。
「授業だけじゃない経験も、ちゃんと武器になる」——丸藤さん

丸藤さんは、「飲食店メニューの自動改善」をテーマに研究しています。アルバイト先の日高屋で感じた課題を出発点に、メニュー名や説明文、売れ行きデータをAIで分析し、より分かりやすい構成を提案する仕組みを構築。現場の問題を情報技術で解決する、まさに実践型の研究です。
卒業後は、家電やレジなどを動かす「組み込み系」の企業に就職予定。
「自分の作ったプログラムが、誰かの生活の中で動いているのがうれしい」と話し、最後にこう締めくくりました。
「情報の知識や考え方は、簡単には古びません。
みなさんが今、授業で学んでいることは、これから先も長く使えるちからになります。」
知識を積み重ねるだけでなく、それを“生きた力”へと変えていく——丸藤さんの言葉には、そんな学びの本質がにじんでいました。
授業を通して見えてきた「情報Ⅱ」の意義
3人の話のあとには、それぞれ質疑応答の時間が設けられました。
「高校から大学に進むときに感じたギャップ」「就職活動の流れ」「学科選びの基準」など、具体的な質問が次々と飛び交います。大学生たちは自分の失敗や迷いも包み隠さず語り、教室には活発な対話が生まれました。
共通していたのは、「高校の学びが、大学や社会で確かにつながっている」という実感です。
情報Ⅰ・Ⅱの授業で培うプログラミングやデータ分析の力が、大学での専門科目に直結していること。英語や数学といった基礎科目も、情報の世界では欠かせない“共通言語”であること。そして、授業の外での活動も、自分の物語として将来に生きること——それらが、3人の言葉を通して伝わってきました。



情報を学び、未来を見つめるということ
今回の高大連携授業は、情報Ⅱの学びをさらに実感的に広げるための授業として企画されました。同じ情報学部でも異なる3分野の先輩たちが登壇し、それぞれの進路や学びの形を語ってくれたことで、生徒たちは“情報を学ぶ先にある未来”を身近に感じ取ることができました。授業としての取り組みでありながら、進路やキャリアを考える機会としても充実した時間になりました。


今後は、工学院大学のDX実践ラボの活用や、別テーマでの授業展開も予定されています。高校と大学の往復から生まれる新たな学びにどうぞご注目ください。(広報室)
※DX実践ラボ(工学院大学)
www.ns.kogakuin.ac.jp
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