こんにちは、広報室です。
今日は、進行中の工学院大学の学生と硬式野球部による実践的な連携プロジェクトをレポートします。
野球部の練習試合の映像をもとに、選手の打撃フォームをデータ解析、比較・検討し、フォーム改善のヒントとして活用する。そんな研究が、工学院大学 情報学部 コンピュータ科学科 ユビキタスセンシング研究室 に所属する石﨑大暉さん(4年)によって行われています。
大学生の研究が高校生の活動とつながり、「学びの循環」が生まれる高大連携の現場です。



■ テーマは「打者のタイミング能力を可視化」
石﨑さんの研究テーマは、「打者のタイミング能力の定量化および可視化」。 高性能なスポーツ解析機材が導入されることの少ない高校野球の現場において、一般的なカメラで得られる映像のみを用いて、動作の違いを比較・分析し、フィードバックする試みです。
「プロの現場には専用機材もありますが、高校では難しい。だからこそ、映像とソフトウェア技術を使って、誰でも使えるような仕組みをつくれたらと思っています」と石﨑さん。
現在は、撮影した試合映像をもとに、ピッチャーのリリースや打者の始動タイミングなどを抽出し、フォームの違いを“見える化”するための方法を模索しています。


■ 選手と一緒に検討する「比較と気づき」の時間
この日、石﨑さんは練習試合で撮影したバッティング映像の中から、選手がリクエストした打席をデータから呼び出し、2人分のフォームを並べて表示。スロー再生を使って微細な動作の違いを確認しました。「この打席はタイミングがいい」「グリップの位置が違う」「スイング開始が遅い」など、選手たち自身が気づいた点を言葉にし、意見を交わしています。
「今まで家族が自分のフォームを撮ることはあっても、こうして比べたことはありませんでした。映像で比較すると、良くも悪くも結果を導く理由が一目でわかる。課題が見えます」



■ 将来的には自動化・数値化へ
石﨑さんは、将来は大学院へ進み、骨格推定技術や画像処理の知見を活かして、「フォームの数値化」「スイングタイミングの自動抽出」なども視野に入れた研究を進めたいと言います。「今はまだ比較や検出を手作業で行っていますが、将来的には、映像を読み込むだけで動作の特徴や変化を可視化できる仕組みをつくっていくこともできる」と石﨑さん。
研究の応用の可能性としては、スポーツ指導への支援だけでなく、運動学習や医療分野への展開なども考えられます。



■ 附属校だからこそ生まれた現場連携
中高に隣接する大学のグラウンドで練習や試合を行う高校野球部と、大学の研究が自然に交わるのは、高大が日常的に関わり合っているからこそ実現する強みです。
また、硬式野球部顧問の雨宮先生は次のように語ります。
「タイミングの指導は、感覚で済まされることが多い部分。でも、こうして可視化されれば、明確な改善点として選手に伝えやすい。これまでにない視点で指導の幅が広がります。今はこうしたデータ分析は小学生や中学生などにも需要が多いはずです」


選手の「動き」を“数値化”し、見えるかたちで“気づき”に変えていく。
これは、部活動の枠を越えた、新しい学びの体験です。そしてこの実践は、大学の研究者にとっても、理論と現場をつなぐリアルなフィールドとなっています。
高校生の成長の側に大学生が寄り添う、そんな日常の一端がここにありました。(広報室)