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工学院大学附属中学校・高等学校<公式ブログ>

【中高大連携】法政大学xインターナショナルクラス中学生 GIS出張講義

今日は、中学のインターナショナルクラスで、法政大学グローバル教養学部GIS)による出張講義を実施しました。対象は中学2年・3年の生徒とその保護者。前半は法政大学GISについての学部説明(日本語)、後半は同学部教授・新谷優博士(社会心理学)による模擬授業(英語)という二部構成です。

学部説明では、「英語を学ぶのではなく、英語”で”学ぶ学部です」という紹介がありました。紹介が終わると、同席していた高校の奥津教頭から、「中学生も大学受験は先の話ではないよ。さきほど説明があったように、推薦入試の”内申書”に必要なのは高校1年生の成績から。中学3年生は、もう半年後にはそのステージに立つんだよ」との言葉に少し身が引き締まる中学生たち。
大学進学を“遠い将来”から“身近な現実”として意識する時間になりました。


英語で挑む「認知バイアス」—新谷優博士による模擬授業

後半の模擬授業では、法政大学グローバル教養学部教授・新谷優博士が登壇。テーマは社会心理学の基礎概念「Cognitive Bias(認知バイアス)」です。

講義はすべて英語で行われ、博士は冒頭、「私の授業は少人数で行います。学生の顔と名前をすべて覚えていて、もし居眠りしていたら近くまで行って質問します」と語りかけ、会場の空気を一気に和ませました。

授業の導入は25セント硬貨のコイントス実験。
「10回投げたとき、すべて表が出る場合と、表と裏が交互に出る場合、どちらが起こりやすいでしょう?」
生徒たちは“交互に出る方がありそう”と手を挙げます。
博士は「どちらも確率は同じ。実は、これが私たちの判断のくせなのです」と説明し、人が“もっともらしさ”に引き寄せられる心理を紹介しました。ここから授業のキーワード—Heuristics(判断の近道)—へと話が進みます。

博士は「考えることにはエネルギーが必要です。だから私たちは、なるべく考えずに判断したくなる。そんな人間を“Cognitive Miser(認知的けちん坊)”と呼びます」と笑顔で説明。思考を節約する傾向が、誤った判断や偏見につながることを、やさしい英語で語りかけました。

次に登場したのは、有名人の名前を並べたスライド。
スティーブ・ジョブズマイケル・ジャクソンジョー・バイデン、そして社会心理学者たちの名前が続きます。博士は「この中で知っている人は?」と問いかけたうえで、「では男性と女性、どちらが多かったでしょう」と質問。
多くの生徒が「男性が多かった」と答えると、スライドが再び映され、実際は女性の方が多かったことが明かされました。
博士は、「なぜそう感じたか?」を掘り下げながら、「思い出しやすい名前を“多い”と錯覚する心理=Availability Heuristic(利用可能性ヒューリスティック」を説明しました。
さらに、「最初と最後に登場した人物は記憶に残りやすい(初頭効果・新近効果)」という現象も紹介。
生徒たちは、授業の中で“自分の判断がどのように作られるか”を実感していきます。

続いて、夢の中で見た出来事が現実になったと感じる体験を例に、人が自分の記憶の範囲内の情報だけで世界を判断してしまう傾向を説明。ここから話題は「Illusory Correlation(錯誤相関)」へと展開します。
博士は「たとえば、ニュースで見かける“外国人のマナー違反”のような報道が繰り返されると、“外国人=マナーが悪い”という誤った関連づけが生まれる」と指摘。さらに「マスメディアが注目するのは、しばしば少数派の目立つ行動。人はそこに注意を向け、実際より頻繁に起きていると感じてしまう」と説明しました。
英語スライドには “Illusory correlation: believing two things are related when they are not” と示され、偏見やステレオタイプ心理的カニズムが具体的に浮かび上がりました。

終盤では「Confirmation Bias(確証バイアス)」についても言及。「一度“そうだ”と思い込むと、その考えを裏づける情報ばかり集めてしまう。これが偏見を強化する原因です」と語りかけました。博士は、「もし何かを強く信じているときこそ、自分の判断を一度疑ってみてください」と締めくくり、生徒たちは真剣にうなずいていました。

「何か質問は?」との問いに、生徒から手が挙がりました。
「コイン投げの話ですが、10回すべて表が出るのと、表と裏が交互に出るのが同じ確率というのはわかりました。
…でも、どうして私たちは“混ざるほう”を選んでしまうんでしょう?」
会場が少し笑いに包まれる中、新谷博士は穏やかに応じます。
「それはちょっと難しいですね。……ヒューリスティクスの罠ですね。」
“That's the trap of heuristics.”
人が「ランダムらしく見えるもの」を“正しそう”と感じてしまう心理——まさに授業全体のテーマを凝縮したやりとりでした。
この一言に、生徒や保護者の間から小さな笑いと拍手が起こり、会場には柔らかな空気が流れました。


講義を終えた生徒からは、「初めて聴く内容の授業で、新しい単語も多かったけれど、興味があります。先生の話しに惹き込まれました」との声がありました。

英語を学ぶだけでなく、英語“で”考える——GISが掲げる教育理念を、そのまま体験できた時間。
本校インターナショナルクラス/コースのカリキュラムとも通じる部分が多く、探究や英語による思考を重視する学びの姿勢には高い親和性が感じられました。

最後に、このような新しい知の世界を広げる機会を提供してくださった法政大学グローバル教養学部の新谷優博士、関係の皆さまに感謝申し上げます。(広報室)

※法政大学グローバル教養学部ウェブサイトはこちら
https://www.hosei.ac.jp/gis/