自宅でのオンラインの授業が始まったと同時に、プログラミング講座のメンバーから、「オンラインでモデリングバトルをやりたいのですが」という相談を受けました。いつもは学校でやっているモデリングバトルは、時間内にお題を決めて、fusion360というソフトを使ってデザインしていくものです。こうしてできたデザインは、3Dプリンターで、実際に出力することが可能です。
早速他のメンバーにも声をかけたところ、ぜひやりたい!という手が複数上がり、あっという間に開催が決定しました。早い方が良いということで、授業のない土曜日から日曜日にかけてモデリングし、日曜日の夜にzoomを使って作品発表を行うことに決定しました。お題は土曜日の朝8時に発表、Edmodoで連絡するとともに、図書館のHPでも公開しました。
さらに生徒からの希望で、教員の友人などを中心に外部の方の審査員もお願いしたところ、Fusion360を提供してくださっているAutodesk社の方や大学の先生、博物館や教育研究所にお勤めの方や他校の先生、そして卒業生!など、たくさんの方が審査員に手をあげてくださいました。
当日は以下の流れで、行いました。
外部の方も来てくださっているということで、まずは、簡単にいつもの活動の説明からはいりました。今回は実は他校の生徒も参戦してくれました。日曜日の夜、それも遠い九州から参加してもらえるというのは、オンラインだからこその魅力です。
採点のルールも説明して、いよいよプレゼンがスタートです。最終的には、生徒7人(中学生2名、高校生5名)、教員、保護者の方など10人がエントリーしてくれました。
以下はエントリーの10作品です。
エントリーの順番に作品をご紹介して行きます。
① Webカメラフード
パソコンのディスプレイに備え付けられたカメラの写る範囲を調整できるアタッチメントです。2枚のスライドを動かすことで、左右を絞ったり、物理的にカメラをクローズにすることができる優れものです。全国的に遠隔での会議が増え、カメラの切り忘れによる問題もちらほらと聞こえてきますが、物理的に蓋をしてしまう習慣をつけると安心ですね。
② 物理的にゲームを禁止するカバー
ついつい無意識に手にとってしまうスマートフォンですが、このアタッチメントはスマートフォンの画面の内、主にゲームで用いる部分だけを集中的にカバーできるように設計されたカバーです。例えば透明の素材で印刷することで、可読性は失わずに操作範囲だけをコントロールすることができるというコンセプトでした。
③ 居眠り防止板(仮)
うっかり寝坊してしまった日に思いついたというこちらのデコボコの板、体のツボを刺激して、無理やり目を覚ませようという、シンプルですが強力なアイテムです。思いついてから10分でプロトタイプを設計したそうで、発想のエピソードも含めてとても面白いプレゼンテーションでした。
④ Apple Bottle
ペットボトルに工具不要で取り付けることのできるスマートフォンスタンドです。ペットボトルを水で満たしておくことで、安定してスマートフォンを支えてくれます。デスクトップパソコンではカメラがついていない機種も多く、スマートフォンをカメラがわりに使うことが多いそうで、家のもので手軽に利用できるスタンドを作れないかと思いついたそうです。熱を逃すための穴や、首の角度を調整できるような工夫もされています。
⑤ オープナー
ドアノブとサムターンに直接手を触れずに、扉を開けることができるアイテムです。キャップ付きの筒状の形状をしており、キャップを外すことでサムターン用の溝と、ドアノブ用の筒が現れます。キャップにはカラビナにつなぐことのできるフックもついており、手軽に携帯することができます。グリップの形状や、普段使いをしてもらうためのユーザへの工夫が凝らされた、とても完成度の高い作品でした。
⑥ ラップフェイスシールド
3本の筒状の突起に沿ってラップを装着することで、簡易的にフェイスシールドを作ることができるアイテムです。実際にラップを顔の前に持ってきて、曇らないか、息で靡かないかなど、実験を行って設計したそうです。少しずつでも家庭にあるもので感染対策のグッズが自作できるようになれば、きっと生活の安心感を高めてくれるはずです。
⑦ マグクランプ
机にクランプで固定することのできるマグカップホルダーです。カップの取手部分に切り込みが入っており、アクセスシビリティは失わずにしっかりとカップを保持してくれます。作業に集中しているとついついカップを倒してしまうという経験からデザインをしたそうで、審査員の方からの共感も多く、すぐにでも欲しいという声が聞かれました。
⑧ ビュリダンのサイ
入れ子構造のサイコロで、外側のサイコロには「English」「Housework」などのカテゴリ、内側のサイコロには「15」「60」などの数字が書かれています。何をやったらいいか分からず、その場から動けなくなってしまうという『ビュリダンのロバ』から発想を得た作品で、迷った時にサイコロを振り、外側のカテゴリと内側の数字を合わせることで「何を何分やる」というヒントを与えてくれます。
⑨ 分解できるペン立て
自由に組み合わせることのできる、モジュール化された収納のシリーズです。パズルのようなデコボコを備えたペン立てや小物入れを、自分で自由に組み合わせることができます。1つ1つのモジュールが家庭用の3Dプリンタで印刷できる平均サイズに収まるように設計されており、今後のラインナップにも期待の声が上がっていました。
⑩ 見守りコーガくん
工学院のマスコットキャラクターであるコーガくんを模した見守りデバイスです。Arduinoと測距センサ、スピーカーが組み込まれており、状況に応じて動作をしてくれます。たとえば会議などで設定した時間ごとに音声を流し、休憩や気分転換を促してくれます。センサやスピーカーを上手くコーガくんに馴染ませており、審査員の方からもとても好評なデザインでした。
それぞれのプレゼンの場面では、自身のパソコンの画面に切り替え、それを操作しながらプレゼンを行いました。どの生徒も、自分のアイデアを丁寧に説明していて、とても素晴らしかったです。オンラインという仕組みが、かえって臨場感を与えてくれるということも、意外な発見でした。
各々の発表の後は、それぞれ質疑応答を行い、参加者の方から、たくさんの質問やコメントをいただきました。また、最後には、審査員の先生方からコメントをいただき、とても充実した時間となりました。
さて、最終的な投票結果ですが、以下のようになりました。実は2位以下はかなり白熱していました。みなさんは、どの作品が一番気に入ったでしょうか?
1位 オープナー 10票
2位 分解できるペン立て 6票
2位 居眠り防止板 6票
参加してくれた皆さん、そして審査員を勤めてくださった皆さん、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。
生徒の発案で思いがけず開催できた、第1回モデリングバトル。とても盛り上がった楽しい時間となりました。こんな時だからこそ開催できるものを、また考えていきたいと思います。